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惑星イオはどこにある

「水銀の沼~ひまわりの夢をみる星屑~」「水銀の沼~星屑に夢を抱くひまわり~」を読んで

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紺碧もも様の「水銀の沼~ひまわりの夢をみる星屑~」「水銀の沼~星屑に夢を抱くひまわり~」を拝読いたしました。素敵な表紙!

 

booth.pm

 

以下は既読者向けの記事になりますが、Pixivで5話まで試し読みができるようです。ぜひ!

www.pixiv.net

 

 

 

 

ーー以下、既読の方向けの記事になります。

 

「水銀の沼~ひまわりの夢をみる星屑~」と、「水銀の沼~星屑に夢を抱くひまわり~」。

 

同じタイトルの本だけれど、「水銀の沼~ひまわりの夢をみる星屑~」のほうが『先に読む本』。どうして1・2巻になっていないのか、もしくは上下巻構成になっていないんだろう? と不思議に思ったりしながら、美しい表紙の手触りも楽しみつつ読ませていただきました。

 

 

まずは「水銀の沼~ひまわりの夢をみる星屑~」から。

オフィーリアを思わせる不穏な表紙。ミステリアスな始まり。タイトルが「沼」だったので、もしかして夜のお店にはまってしまうのかしら、とちょっと不安に思ったりなどしつつ……

来店1回目の「会話は苦手だけど一方的に話すのはかなり好き」という、素直だけれど身勝手で、でも性格がよくよく表れているような序盤のセリフで、銀花のことをすっかり気に入ってしまいました。そのあと少しずつ明かされていく周辺情報と、シスイちゃんの煌めきと。

 

銀花は、『だからどうか馬鹿正直に全てを信じたりしないで』と祈りながら、『この人はなんでも目ざとく褒めるポイントをみつけてくる』なんて思いながら、『ひな鳥を連れて歩いてる』。(※どれも好きな一文です)

 

でも運命は下り坂の一本道で、すっぽりとリンゴが穴に収まるみたいに、重力がなにかを定めているかのように、彼女を海へ帰してしまう。

 

 

――喪失感のあるままに、「水銀の沼~星屑に夢を抱くひまわり~」へ。

ぐるんと転換。次はひまわり側から。

 

星屑巻では、銀花視点だったのでシスイちゃんの煌めきがまぶしかったものですが、シスイ視点になってみると銀花もなかなか女たらしだなあと思うのでした……

「考えたって仕方がないことは考えない。そういう人間にわたしはなるべきだ」とか「君が三十で死んだらワタシが二十七で死ぬだけのことだ」とか、ちょこちょこ心臓を押さえつけながら読みました……

 

 

そして、少しずつ違いの出てくる会話、ほんの少しの流れの傾き、ラストには大きく舵切りが行われて、エンディングが分岐する。

 

ただ、これを『分岐』と受け取れるのはわたしたちが神の視点を持っているからであって、星屑巻もひまわり巻も、どちらもその世界の銀花とシスイにとってはたった一つの現実で、変えられない不可逆の流れであるわけです。

 

真っ暗な星屑巻と、その闇を少しずつ晴らして最後は満開の花畑にしてしまうひまわり巻と。二巻構成(上下巻でも、1・2巻でもない)だからこそできる取り組みだなあと思いました。

個人的には星屑巻はそれ単体でもかなり好きですが、やはりひまわり巻とセットで見て……という良さもあるなあと思っています。ようやくこのエンディングまでこれた! というような感じ。全クリ……には程遠いような気がするものの……(もっとスチルや差分やルートがいっぱいありそう)

 

 

 

星の王子さま」作者のサン=テグジュペリは、「万人の領域に属する最も単純な要素」として花と星とをあげていました。人がきれいなものを思いだすときには、花と、星とが、最も単純な要素として想起される。あと恋と。

 

感想を書くのにすこし手間取ってしまいましたが、じつは本を受け取ってから2日ぐらいで読んでしまいました。ページをめくる手が止まらない、若葉がぐんと水を飲みこむみたいな素直なスピードで読むことのできる、素敵な百合本でした。(そういえば、百合小説本読んだの初めてかも?)

 

 

 

ふたりがこれからも手を取り合っていけますように。

 

また、以前は「Hangman's Knot」の感想も書かせていただいたりしました。こちらの作品もWebで読めますので、みなさまぜひどうぞ。

 

meeparticle.hatenablog.com