2019年に読んだ本のはなし
いやーびっくり。2019年、終わってしまいましたね。「2020年」の響きにはどうもなれませんが、契約書を作ったり、議事録の日付をつけたり、そういうことをしているうちに、あ、いま2020年にいるんだな、と少しずつ呑み込めるようになってきました。
さて、では2019年に読んだ本のはなしをします。
ちなみに、2018年に読んだ本のはなしはこちらです。
では例年通り。
2019年に読んだ本
- 幽麗塔(江戸川乱歩)
- 去年を待ちながら(フィリップ・K・ディック)
- 自負と偏見(オースティン)
- 砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない(桜庭一樹)
- 青年のための読書クラブ(桜庭一樹)
- わたしたちが孤児だったころ(カズオ・イシグロ)
- 完全版 社会人大学人見知り学部 卒業見込(若林正恭)
- きみの世界に、青が鳴る(河野裕)(階段島シリーズ vol6 完結!)
- すべてがFになる(森博嗣)
- 私が大好きな小説家を殺すまで(
斜線堂有紀 )
- 天気の子(新海誠)
- しろいろの街の、その骨の体温の(村田沙耶香)
- 僕たちの小指は数式でつながっている(桜町はる)
- 月の影 影の海(小野不由美)上下巻 ※再読
- 風の海 迷宮の岸(小野不由美)上下巻 ※再読
- 東の海神 西の滄海(小野不由美) ※再読
- 図南の翼(小野不由美) ※再読
- 華胥の幽夢(小野不由美) ※再読
- 黄昏の岸 曉の天(小野不由美)上下巻 ※再読
- 白銀の墟 玄の月(小野不由美)1~4巻
- 第2図書係補佐(又吉直樹)
- さよならの言い方なんて知らない(河野裕)
- さよならの言い方なんて知らない2(河野裕)
- ライ麦畑でつかまえて(サリンジャー)
- ナイン・ストーリーズ(サリンジャー)
- デミアン(ヘルマン・ヘッセ)
全32冊でした。あんまり記録していなかったので、覚えている限り、になります。
以下、一冊ずつ感想を3~5行程度で書いていきます。致命的ネタバレはしませんが、台詞抜き出して書いたりはしています。お気を付けください。
「世界は空っぽか? 諸君、世界はほんとうに空っぽか?」と、未だに誰かに問いかけられているような気がします。お嬢様女子高のなかで、いまいち光り輝けない地味な生徒が集まる「読書クラブ」を中心として巻き起こる学園ミステリ。世界全般の「光」を信じたくなるような、愛情あふれる本です。
中国とイギリスとが舞台の、アヘン戦争が絡んだ物語。ヒーロー扱いされている探偵、小ども向けのアニメみたいに簡単そうで夢見がちなクリア条件、そして残酷な真実。親が子を思う気持ち、というのは世界でいちばん純粋なんじゃないか、と思わされる物語。カズオ・イシグロは今のところどの本も全て素晴らしいです。
■完全版 社会人大学人見知り学部 卒業見込(若林正恭)
オードリー若林さんのエッセイ。相方春日の、「どうしても幸せなんですけれど、それじゃ成功できませんか?」が心にくる。日本には、不幸でないと「成功」できない、という宗教を持っている人が一定数いて、わたしもその一人です。
■きみの世界に、青が鳴る(河野裕)(階段島シリーズ vol6 完結!)
階段島シリーズ、ついに完結!「いなくなれ、群青」から始まって、最終巻は青春ものらしく、「青」に帰ってまいりました。なくしてしまったもの、忘れがたいもの、そういうものがやっぱり好きなのかもしれません。信仰しているけれど離れることができて嬉しい、だとか、そういう、そのキャラクターしか持ちえないようなオリジナルな愛情、というものを描いている作品が好きです。階段島シリーズにおいて、愛とは信仰のことでした。
かの有名な理系ミステリ。発行が古いので、多少古びた使い方に見えるようなコンピュータ用語もいくつかありつつ、まあ、楽しめました。こういう人気シリーズものをいくつか読んでいきたいと思います。
■私が大好きな小説家を殺すまで(
エモ系ライトノベル。ライト文芸、ぐらいの立ち位置でもあるかもしれません。
大好きな小説家が、小説を書けなくなる、文章を書かなくなる、綺麗な顔をつかって本を売るようになる、自分にだけは優しくしてくれたことを覚えている、恋のような家族愛のような、粘着する愛情。テープの剥がれ跡みたいな恋慕。終わり方のエモさが大変よい。「おれはずっと見てるからね」
■天気の子(新海誠)
2019年で一番よい映画だったと思います。もちろん映画鑑賞後に読みました。副読本としてほんとうに素晴らしい。文字を読むことで、あの美しい色彩のアニメーションが頭のうえにぼんやり浮かんで放映されているようで、とてもユニークな読書体験を楽しめました。まず映画を見てから、ぜひお読みください。この物語に「愛にできることはまだあるかい」ってテーマソングを書いたアーティストは天才だ、と思います。
■しろいろの街の、その骨の体温の(村田沙耶香)
「コンビニ人間」で受けた衝撃と期待とを、まったく裏切らない面白さ。博物館で絶滅した生き物に関する奇妙な習性を学ぶような興味深さがある。成長の止まったベッドタウンで、成長期の女子がこじらせて起こす成長痛。反して、まっすぐまっすぐ育つ男。その二人の痛ましい恋愛。似た作品でいうと綿矢りさの「ひらいて」がやはり至高だけれど、本作は、モテる男子とモテない女子、という組み合わせがまた一味違って面白い。友人のオススメで読みました。
■僕たちの小指は数式でつながっている(桜町はる)
これもライトな理系ミステリ(恋愛もの)に入るのだと思います。理系のなかでも数学系。「博士の愛した数式」といい、数学系と記憶喪失系は相性がいいのだろうか(というより、短期記憶喪失系の設定は、「天才」に持たせないとそもそも話が成り立たないのかもしれませんが)。モンティ・ホール問題、友愛数、などなどの単語がちりばめられていて、理系の人(というか、数学系のパズル本とか好きだった人)なら懐かしく楽しめる恋愛小説でした。読みやすかったです。
■月の影 影の海(小野不由美)上下巻
ここから十二国記です。いやーとてもいい。何度読んでも新たな発見がありますが、やっぱりこの作品は、自分が可哀相でたまらない思春期の女の子・男の子に読んで欲しいなあ、と思うのでした。
■風の海 迷宮の岸(小野不由美)上下巻
一番、終始幸せな物語なのではないでしょうか。可愛らしくてたいへんよい。
■東の海神 西の滄海(小野不由美)
王に出会うと、一にも二にもまず嬉しい、という麒麟の特性が印象深く描写されていて、無二の関係をえがいたうえにとっても面白い小説だと思います。いやー、十二国記はさすがに良すぎていっそ言うことがない。
■図南の翼(小野不由美)
小さいころから分からなくて、考え続けていた疑問に、まっすぐに、やさしく、現実の回答をくれた物語です。ちょうど主人公の女の子と同じ年のころに読んだと思います。
■華胥の幽夢(小野不由美)
改めて読んでみると、新作を読むために必要な知識の詰まった短編集。かなり慎重に、ミステリで犯人あてをするときみたいな気持ちで、じっくりと読みました。
■黄昏の岸 曉の天(小野不由美)上下巻 ※再読
責任感の権化。なにか大きな崩壊が起こる、それを止めたいと思う、なぜそう思うのか? ――もしもその崩壊が本当に起こってしまったならば、それは自分のせいだと思うからだ。
書評(というか、本の推薦文)のまとめ、ということになってはいるけれど、実際的にはエッセイ・コラム集。この人の人生には、ひとつひとつのエピソードに本が寄り添っていたんだな、と分かる一冊。最後の対談で、「芸人になって笑いが仕事になってから、笑いには救われにくくなった。作家はぼくのあこがれです」とデビュー前の又吉直樹が言っているんだけど、芥川賞作家になってしまった今、本が依然としてかれのなにかの助けになっていますように。
■さよならの言い方なんて知らない(河野裕)
クローズドゲームもの。不思議な箱庭のなかで、永遠に8月を繰り返し、ポイントを奪い合い、「スキル」を習得して殺しあう世界。死んだら、全部「元通り」――つまり、現世にどうやら帰れるらしい。こういう設定の話を好む自分が新鮮です。「生きろ、生きろ、生き延びろ」こういう哲学がある作品が好きです。階段島シリーズの河野さんの新作でした。
■さよならの言い方なんて知らない2(河野裕)
2巻目。ゲームもの書きたくなる。「ルールとは外れたところで勝負する」人間って、やっぱりチート感あって格好いいですよねえ。十二国記が(長編は)終わってしまったので、本作が今のところ唯一の「新刊が出たら買う」シリーズものです。
近所のガキ大将に弱みを握られた主人公は、暗い世界に足を踏み入れそうになるが、すんでのところで「デミアン」が助けてくれて――。少しずつ大人になって、口調が変わっていく主人公。かれが追い求めるもの、デミアンが追い求めるもの、はたして少年だった彼は、いったいなにを手に入れたのか? さすがの面白さでした。
長々と失礼しました。では2019年度ベストテンを。
2019年時点のベストテン
「わたしを離さないで」(カズオ・イシグロ)
「自負と偏見」(オースティン)
「去年を待ちながら」(フィリップ・K・ディック)
「図南の翼」(小野不由美)
「ナイン・ストーリーズ(「エズミに捧ぐ」)」(サリンジャー)
「ひらいて」(綿矢りさ)
「青年のための読書クラブ」(桜庭一樹)
「少女不十分」(西尾維新)
どれほど素晴らしい作品でも、読んでいないと薄れていく感じがありますね。再読していかなくては。心が締め付けられる作品や、なにかを思い出したくて痛くなるような作品が好きです。
2020年は、ライトノベルや新書などの本を多めに読みたいと思います。